で、今週読んだ本。

2001年8月24日
・天藤真 『大誘拐(天藤真推理小説全集?)』 創元推理文庫

大阪刑務所の雑居房で知合った三人が出所後に営利誘拐を計画する。狙うは紀州随一、全国にも聞こえる大富豪、四万ヘクタールの山林を所有する柳川家。当主は82歳にして小柄ながら矍鑠たるお婆さん。菩薩の慈愛を以って地元の人には神と崇められている。綿密な下調べの末、ついに誘拐は成功。しかし、話次第に妙な具合に。身代金は百億円!
この誘拐劇の結末やいかに。

ミステリで誘拐と言えば人攫いの岡島、と呼ばれた岡島二人が有名で私も文庫版はほとんど持っているほどなのですが、この天藤真と言う作家はちらりと目にした事がある程度でした。
しかし、日経エンタテイメントの紹介記事にのせられて買ってみるとこれが面白い。テンポの良い構成、メインキャラである柳川とし子刀自の人間的魅力、そして全編を貫く爽やかさ。少々前の作品(初出1978年)なので古さを感じさせる部分もありますが読んで損はないと思います。
ちなみに第十二回日本推理作家協会賞受賞作です。

・宮部みゆき 『R・P・G』 集英社文庫

宮部みゆき初の書き下ろし文庫作品。ネット上で擬似家族を演じていた「お父さん」が殺された。虚構と現実の中で錯綜する人間関係。デスク配置の警察官が編み出した犯人逮捕の秘策とは…。

えー、帯では同じ作者の作品の『模倣犯』と『クロスファイア』に登場した刑事が本作で再登場と言うのが売りの一つになって居ます。が、今回は二人はストーリーの引き回し役に徹しています。
私もネットで遊んでいる人間として色々考えさせられる事も多い作品ではあります。が、一番の本筋は親と子の確執と言う所です。
昨今ますます浮薄になって行く親子の絆。今まで語り尽くされてきたテーマをネットと言う小道具を絡める事によって時代性を持たせて再構築したと言った感じ。中編より少し長いくらいのボリュームですがしっかりどんでんがえしもあり、これで500円ならまあ満足でしょう。
さすが宮部みゆき。外れはありません。

・篠田真由美 『月蝕の窓−建築探偵桜井京介の事件簿−』 講談社ノベルス

建築探偵シリーズも10冊目。外伝的な『センティメンタル・ブルー』が出てから日も立たずの刊行は嬉しい所。今回は那須高原に立つ明治時代の別荘。その別荘にまつわる一族の呪いとやらの話。完全に桜井京介メインで話が進みます。しかし、著者があとがきでも言ってますが京介が最初からうじうじと悩みまくり。シリーズ読者でなければかなり鬱陶しい所です(笑)
メインテーマは「多重人格」
その信憑性が今回のキーになってきます。が、今回は私がかなり早くから展開の見当がついてしまって、ちと残念。
ですが、シリーズ物らしくしっかり読ませてくれる所はまあさすがと言おうか。シリーズのファンなら文句無しな所でしょうか。

とりあえずはこの三冊。
明日は休日出勤。やれやれ。

コメント

鴉

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