ジョン平とぼくと

2006年12月22日 読書
ISBN:4797337117 8 著:大西科学 絵:銀 ソフトバンクGA文庫 ¥630 2006/09/15
そこは魔法が日常的に存在する世界。魔法の苦手な高校生・北見重は、大した能力もなさそうな彼の使い魔・ジョン平とともに、なんとか日々をやりすごしている。目下の悩みのタネは、3週間後に予定されている魔法実技の試験である。
 そんなある日、重の通う高校に、新任の物理化学教師がやってくる。普段使われていない化学室の個人利用を許され、ひとり化学実験などにいそしんでいる重にとっては、自分の大切な居場所がなくなるかどうかの一大事。しかし実際には、それはもっと大きな出来事の序曲にすぎなかったのだった。
 架空科学系テキストサイト「大西科学」が贈る、ハートウォーミング・ファンタジー。巻末には小川一水氏による解説を収録
小川一水氏が解説を書いている事に釣られて購入してみたのだが、すっかりお気に入りとなった作品。
魔法が日常的に存在すると言う世界を、実に日常的に描くと言うのは実は中々難しい。
魔法の呪文を日常的な言語の羅列として描く事はそれ程の事ではないが、本作に置いて重要なのはやはり「使い魔」との共生。
魔法を覚えると共に使い魔を得、魔法が上達すると共に使い魔の馴致や能力もはっきりとしていく。
と言う事で魔法的にはおちこぼれな主人公重の使い魔ジョン平も会話は片言。使い魔としてはどうにもぬるい存在だが、なんとも間の抜けたその名前と共に重と良いコンビとなっている。
亡くなった父親と死別した使い魔エンダーとの確執。おちこぼれの自分を気にかけてくれる良く出来る幼馴染の存在。
そしてこの世界ではあまり認められていない科学への興味。そして謎の新任の先生。そして起きる事件。
日常の良く出来たぬるさと事件、そして伏線のスパイス。
何処と無く奥を感じさせながら全体としては心地良く文章を読ませるバランスの良さがこの本にはあるように思う。
既に二巻が12/15に発売済。こちらも良作で、今期の新シリーズとしてはお気に入りの一作となっている。
GA文庫と言う新興勢力から出た、なんとも地味でぬるい小説。

コメント

鴉

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