ISBN:4062734931 文庫 福井 晴敏 講談社 2002/07 ¥730
圧倒的スケールで描く三賞受賞の傑作
在日米軍基地で発生した未曾有(みぞう)の惨事。最新のシステム護衛艦《いそかぜ》は、真相をめぐる国家間の策謀にまきこまれ暴走を始める。交わるはずのない男たちの人生が交錯し、ついに守るべき国の形を見失った《楯(イージス)》が、日本にもたらす恐怖とは。
日本推理作家協会賞を含む三賞を受賞した長編海洋冒険小説の傑作。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062734931/250-8554762-4862664
亡国のイージス映画化の報に触発されて文庫版を読み直してみた。
http://www.nikkansports.com/ns/entertainment/p-et-tp0-040608-0011.html
元々は私がハードカバーで買った稀な作品だ。
粗筋以外は殆ど覚えておらず、じっくり読んでみて、読み終えて涙がにじんだ。
99年にこの小説で指摘された日本の国のあり方はそれから5年たった今でも全く変わっていない。その中で、作中での事件の呼水となった一人の若者の凄烈な論文『亡国の楯』もその真摯さを失わない。そしてこの事件を持って語られる日本の国の形も今、我々が考えなければならない事かもしれない。その意味で映画ではかなりそう言った部分は骨抜きになってしまうのだろうが、原作を手に取って貰える機会が増えるのは喜ばしい事だ。
だが、そうした大上段の国とは人とはと言う話はさておき、この作品は一度自分の意味を失った人達が再びそれを見つけ出す、復活の物語でもある。いや、むしろそれがメインなのかも知れない。
エンディングを読み終えたとき、深い溜息と共に冒頭の光景を思い出し、じーんと痺れる。
そんな経験が出来る極上の海洋冒険小説。未読の方は是非読んでいただきたい。
鴉

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