依頼人は死んだ

2004年8月2日 読書
ISBN:4167656671 文庫 若竹 七海 文芸春秋 2003/06 ¥650
内容(「BOOK」データベースより):
念願の詩集を出版し順風満帆だった婚約者の突然の自殺に苦しむ相場みのり。健診を受けていないのに送られてきたガンの通知に当惑する佐藤まどか。決して手加減をしない女探偵・葉村晶に持つこまれる様々な事件の真相は、少し切なく、少しこわい。構成の妙、トリッキーなエンディングが鮮やかな連作短篇集。
Amazon.comより引用。
『ぼくのミステリな日常』で北村薫に代表される『日常の謎』的作風のミステリ作家としてデビューした若竹七海は私のお気に入りの作家。シリーズ続編となった『悪いうさぎ』が最近文庫で出たのでセットで購入した。
主人公の葉村晶はきっぱりとしたおよそ女性らしくない性格。女性版ハードボイルド探偵と言う感じで好感が持てる。相変わらず読みやすい文体でさくさくと読めるのだが、物語の構成や内容に妥協は無い。
全編に渡って自殺か事故か他殺か、と言う事件を扱い、すっきりと終わる話は無い。全編の底辺に流れる切なく暗い感情、そしてある存在の影。なるほど説明で『少しこわい』と言う言葉が出てくるのが良く解る。自殺と言う事象自体全てが割り切れるものではない。外的要因も内的要因も、全てが渾然と絡まりあった結果だ。
そんな割り切れない気持ち悪さ、がまた面白い。そしてそんな中で、葉村晶の手加減のなさ、そして迷いはあるがそれでも突き進むその性格が救いとなる。
取合えず大ヒットもないが外れも無い、そんな若竹七海がやっぱり好きなのである。
鴉

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