復活の地 1

2004年6月15日 読書
ISBN:415030761X 文庫 小川 一水 早川書房 2004/06/10 ¥756
 王紀440年、惑星統一を果たしたレンカ帝国は今まさに星間列強諸国に対峙しようとしていた。だが帝都トレンカを襲った大災厄は、一瞬にして国家中枢機能を破壊、市民数十万の生命を奪った。
 植民地から帝都に戻ったばかりの若き官僚セイオも被災し、敬愛する上司を亡くす。遺志に従って緊急対策に奔走するが、帝都庁との軋轢、陸軍部隊の不気味な動向に翻弄され、強力な復興組織の必要性を痛感する。
 いっぽうレンカ皇室の内親王スミルは、北方の僻地に追いやられた姫だったが、この災害により急遽帝都へ呼び戻され、セイオに力を貸すことになる。
 崩壊した国家の再生を描く壮大なる群像劇、全3巻開幕!
作者HP http://homepage1.nifty.com/issui/
作者本人曰く国家災害SFと名づけられたこの作品。前回の第六大陸と言い今回と言い、最近の小川一水作品はプロジェクトXみたいな感じの作品が多いですね。
一巻は死者五十万に昇る帝都の被害の様子と、この混乱の中で権力掌握に動く登場人物達の説明に費やされています。
軍官民それぞれの内部での対立や主導権争い。それに翻弄される救助活動。災害の混乱の中で先鋭化する民族問題。それぞれが真摯かつ不可分な問題であり、これをどうやって解決していくのか、その手腕が問われます。
モデルは読んでいればなんとなくわかりますが、関東大震災時の日本のようです。星間列強の諸国も当時の西欧列強の雰囲気が見えます。
三巻構成ですので早まった事は言えませんが一巻を見る分には十分期待出来そうです。最後までこのテンションで突っ走って貰いたいものですね。
ISBN:4062734931 文庫 福井 晴敏 講談社 2002/07 ¥730
圧倒的スケールで描く三賞受賞の傑作
在日米軍基地で発生した未曾有(みぞう)の惨事。最新のシステム護衛艦《いそかぜ》は、真相をめぐる国家間の策謀にまきこまれ暴走を始める。交わるはずのない男たちの人生が交錯し、ついに守るべき国の形を見失った《楯(イージス)》が、日本にもたらす恐怖とは。
日本推理作家協会賞を含む三賞を受賞した長編海洋冒険小説の傑作。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062734931/250-8554762-4862664
亡国のイージス映画化の報に触発されて文庫版を読み直してみた。
http://www.nikkansports.com/ns/entertainment/p-et-tp0-040608-0011.html
元々は私がハードカバーで買った稀な作品だ。
粗筋以外は殆ど覚えておらず、じっくり読んでみて、読み終えて涙がにじんだ。
99年にこの小説で指摘された日本の国のあり方はそれから5年たった今でも全く変わっていない。その中で、作中での事件の呼水となった一人の若者の凄烈な論文『亡国の楯』もその真摯さを失わない。そしてこの事件を持って語られる日本の国の形も今、我々が考えなければならない事かもしれない。その意味で映画ではかなりそう言った部分は骨抜きになってしまうのだろうが、原作を手に取って貰える機会が増えるのは喜ばしい事だ。
だが、そうした大上段の国とは人とはと言う話はさておき、この作品は一度自分の意味を失った人達が再びそれを見つけ出す、復活の物語でもある。いや、むしろそれがメインなのかも知れない。
エンディングを読み終えたとき、深い溜息と共に冒頭の光景を思い出し、じーんと痺れる。
そんな経験が出来る極上の海洋冒険小説。未読の方は是非読んでいただきたい。
ISBN:4062648806 文庫 恩田 陸 講談社 2001/07 ¥700

暫く日記を休んでいたのはいつものさぼり癖なのだが、あまり書くようなインパクトのある本や漫画が出ていなかったのも確かか。

久しぶりにミステリが読みたくなって通りがかりの本屋を覗いた。
で、出会ったのがこの本。
実はかなり昔一回読んでいる。何せ1997年発行の本なのである。
恩田陸、と言う作家は間違いなく当代でも有数のミステリ作家である。いかにも幻想的な、女性の明るい面と暗い面を合わせたような文章を書く作家さんで作品の面白さは折り紙付きだ。
ただ、幻想的な、と書いただけに読みにくい部分や捉えどころの無い部分、あるいは複雑な構成を持っている部分があり、さらっと読み下しは出来ない。連続して読むと疲れる作家さんでもある。
そんなわけでひさしぶりに読んでみる気力が沸いたと言う事だ。
この作品はその後、三月シリーズとして作品内の様々なエピソードが独立して書かれている。言わば恩田作品の原点にかなり近い作品だ。
作内では幻の本と呼ばれる『三月は深き紅の淵を』を今自分が読んでいると言う入れ子的構成で中身は四章に分かれている。作内の三月と今読んでいる三月が微妙にリンクしながら一章づつ完結で話は進んでいく。それぞれの章とも読み応えがあり、不思議な感覚に捉われる。
恩田作品の入門書として一度手にとって戴きたい本だ。
ISBN:4757718713 文庫 田口 仙年堂 エンターブレイン 2004/05 ¥672
いつ行ってもお客がいない怪しいアンティーク屋「兎轄舎」のお姉さんに呼び出された双葉は、うま〜く丸めこまれてトゲつきの奇妙なヘルメットを被ることに。それは試作段階の植物と喋れる機械「イーハトーブ式交換装置」だった!? 故障で装置が脱げなくなってしまった双葉はおかげでご町内の笑いものに。心配するガーくんの気持ちをよそに、好奇心旺盛な双葉は装置を使い、新しい友達と出会うのだが、どうも様子が変!?
 ますます好調、ご町内ハートフル&ハッピーコメディ第3弾!
町内コメディと言うと最近ではケロロ軍曹なんかがそのタイプでは無いか。まあある一家庭とそのご近所に世界を限定したホームコメディの一呼称なのである。
で、この吉永さん家のガーゴイルは未読のままに、3巻まで出てしまった。噂で面白いと言うのは聞いていたので久しぶりに大人買いして読み始める。
吉永家の兄妹が商店街の福引で当てたのはある骨董屋が供出した錬金術を使って作られた番犬型万能彫像。意思を持ち、吉永家を守るべく義務付けられたこの彫像に、呆れつつもつけた名前がガーゴイル。以後、錬金術絡みの様々なトラブルが吉永家を襲うもこのガーゴイルの為に全て撃退。何かとばっちりな感じがしないでもないが、晴れて家族の一員として認められたガーゴイルは吉永家の安寧を守るべく今日も門前に鎮座している。
と言う感じ。融通の利かないガーゴイルが、家族の暖か味を知り、より人間くさくなっていく様子が面白い。そして絡んでくる錬金術師達は変人ばかり。吉永家は勿論の事、町内の頼れる存在となりつつあるガーゴイルは今後とも成長しながら家族との絆を強めていくのだろう。
気楽によめるライトノベルらしい娯楽作品。
ISBN:4829162570 文庫 師走 トオル 富士見書房 2004/05 ¥588
失われた58年前以前の記憶を求めて――
元〈解放軍〉戦士アヴィンとその仲間たちが、〈異形の敵〉と戦いを繰り広げる。不思議な能力を持つ少女クーナのために、賞金稼ぎとなったアヴィン。そんな彼のもとに、ある奇妙な依頼が! それこそは、〈深遠なる忘却〉と呼ばれる現象以降、記録と記憶をなくした人類の謎に迫る、大事件の始まりだった!!
http://www.kadokawa.co.jp/fujimi/mystery/search.php?pcd=200403000159
先日ディバイデットフロントを読んだ後にすぐこの本を読むと設定が微妙にかぶっていて食傷気味になりそうだったが、雰囲気からして違うのでそうでもなく読み進められた。読んだ印象は?と聞かれてもどうも印象が弱い。まあ、そこそこ読めるし、ストーリーも悪くは無いと思うのだが、それで?と言われるとそこで終わってしまいそうな・・・。やはりディバイデットフロントの影響だろうか。インパクトが無さ過ぎるのだな。
何か敵役もお粗末だったし。どうも読む順番を間違えて不幸な扱いをされた一作。という所で勘弁。
ISBN:4044293023 文庫 高瀬 彼方 角川書店 2004/04/28 ¥680
―それでも、ここで生きようと思った。完全隔離化の戦場「北関東隔離戦区」での、“僕たちの戦争”を描く物語―第2弾登場!
「北関東隔離戦区」―それは、異形の怪物“憑魔”に寄生されたがゆえ、完全隔離下で戦うことを宿命づけられた少年少女たちの戦場。その地獄のなかでも、特に忌まわしき記憶として語られる自衛隊員200名の命を奪った“朝霞事件”が再び起きようとしていた! それを防げるのは、現場へ向かった英次や宮沢の「イコマ小隊」だけ。だがその前に強大な力を持つ赤き憑魔が立ちふさがる!鬼才の放つ切なき戦場の物語、第2弾登場!
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_search.php?pcd=200203000747
一般社会から隔離された戦場に、自らの責任ではなく運命のいたずらによって放り込まれ、戻る事も許されず、勝利する事も敗北する事も許されず、ただひたすらに戦い続ける事を義務付けられた少年少女達。ヘビーだ。ヘビーすぎる。そんな極限状態の中で、それでも日々を生き、過ごしていかねばならない彼等の話が丁寧に緊迫感を持って書かれている良作。
まあ全編重い話でも無く。極限下での指揮維持の関係上、小隊は男女3人づつが基本単位らしく、舞台となるイコマ小隊でも当然の如く前半は隊内の恋話がメイン。しかし中盤からは一転、惨劇の中でのサバイバルな展開。宮沢の意外な活躍、外の世界からやってきた広報班の士官との確執、イチルと英次の微妙な関係、様々なストーリーがからまりつつ、最後まで息をつかせぬまま駆け抜けてくれます。あまりにヘビー。でも読める。これだけでも中々の存在だと思います。お奨め。

9S (3)

2004年5月19日 読書
ISBN:4840226911 文庫 葉山 透 メディアワークス 2004/05 ¥599
 由宇の調査で明らかとなった遺産【天国の門】。それには決してあるはずがないもの、真目家の家紋が刻まれていた!!
 時を同じくNCT研究所では大惨事が発生する。所員の木梨が多くの人間を殺害し研究所を脱走したのだ。行く先は【天国の門】。由宇は独断で木梨を追う。
 ミネルヴァと勝司も【天国の門】の奪取に暗躍する。そして運命に導かれる闘真。今すべてが一つの地に集結せんとしていた!
http://www.mediaworks.co.jp/users_s/d_hp/new/sinkan.html#5
近現代ハードアクション、ナインエスの三巻はどこにも書いてないけど上下巻の上巻になります!だまされたよ!
いよいよ峰岸の遺産の謎の核心に触れる【天国の門】の争奪戦は四つ巴、五つ巴の様相に。逃げつ追いつで忙しい由宇の漢前に感心しつつ、相変わらず天然ボケの闘真になにやってんだと呆れ、端役からメインキャラへの昇格を遂げた木梨に真目のラスボスたる不坐から謎のロリータ刺客も飛び込んで、ぐちゃぐちゃのどろどろな展開。錯綜しながらノンストップで突っ走るストーリーの明日はどっちだ!
ってだから上下巻なんて聞いてないっての。こんな所で終わられたら困るでしょ・・・。早く下巻出してください。
取合えずブラコンの麻耶ちゃんラヴ。

GOSICK (2)

2004年5月18日 読書
ISBN:4829162546 文庫 桜庭 一樹 富士見書房 2004/05 ¥693
混沌の欠片を集め、ヴィクトリカは語る。真実の言葉で――
第一次世界大戦から下ること十年。西欧の小国にある学園の図書館塔に、未来を見通すかのような知恵の泉を持った少女・ヴィクトリカがいた。九城一弥は彼女と出会い、惹かれ、否応なく冒険に巻き込まれる。そんな二人が活躍するゴシック・ミステリーの第二弾がついに登場! 今回は、新聞広告に掲載された謎のメッセージを追いかけて、二人はある山間の村を訪れます。そこで起きる凄惨な連続殺人。そして、過去に起こった、謎の殺人――その容疑者は……。
http://www.kadokawa.co.jp/fujimi/mystery/search.php?pcd=200403000156
半ば幽閉されたが如く、外に出る事を禁じられて学園の図書館塔で過ごす謎の少女、ヴィクトリカと、ひょんな事で友人となった日本からの留学生、九城一弥の冒険譚第二弾です。卓絶した知識力・推理力を持ちながら、幽閉生活の為かぶっきらぼうで小悪魔的な所のあるヴィクトリカと真面目一辺倒の日本人、一弥とのやり取りの面白さと富士見ミステリにしては珍しいしっかりとした?ミステリ仕立てで中々面白かったGOSICKの続刊が出ました。
今回はヴィクトリカを取り巻く様々な謎の一旦として彼女の母親に纏わる事件がメインとなります。相変わらず主人公二人のやり取りはテンポが良く好感。メインのミステリ部分についてはオチがやや弱いような気がしますが、山間の秘境と灰色狼伝説と言うオカルティックな雰囲気が相まって中々読ませてくれます。
ヴィクトリカや、その母親の謎についてはまだまだ引っ張っているので次がどうしても気になってしまう構成。引きも十分でシリーズとしては成功しているのではないでしょうか。
この本はイラストも雰囲気と合っていて中々お奨め。
富士見ミステリ、リニューアルしてからもそこそこのラインナップで来ていてかつての地雷量産が待たれる所です。(を

ヴぁんぷ!

2004年5月16日 読書
ISBN:4840226881 文庫 成田 良悟 メディアワークス 2004/05 ¥641
成田良悟が描く“この世で最も吸血鬼らしくない吸血鬼”の物語
 【親愛なる日本の紳士淑女諸君! 月並な問い事で申し訳ないが――諸君は吸血鬼の存在を信じるかね?】【――失敬、名乗るのが遅れたようだ。我が名はゲルハルト・フォン・バルシュタイン! このグローワース島を預かる、子爵の称号を賜りし吸血鬼! 自己紹介代わりに、我が島で起こった一つの騒動について話をしようではないか! ……まあ語らせてくれたまえ。暇なのだ】【君が私の話を信じるも信じぬも、私が人にあらざる存在という事は一目瞭然であろう? 何しろ私は――】
http://www.mediaworks.co.jp/users_s/d_hp/
編集部の煽り通り。吸血鬼を題材にしたライトノベルは数ありますが見事に成田風に料理。むしろ成田作品にしては今回はキャラが抑え目かなと言う感もあります。後書きを読むと解るんですが、このヴぁんぷ!の主人公って実は《子爵》だったんですね(笑)。いや、そんな主人公が解らない程に、いつもの如く、何人かのキャラに視線がザッピングしながら最後は大集結の大団円を迎えます。
今回は少しストーリーがばらけすぎかな。あまりにも焦点があってないような気がします。なんか端役の筈のカルギラも妙に最後まで存在をひっぱるし。要は誰も○○なかったって事に拘っているんでしょうけれど。もう少し絞っても面白かったのでは。
後、いま少し悪役のヴォッドのキャラが出せてなかったような気がします。成田作品の悪役の中ではインパクトが無い。まあラストはしっかり締めましたが(笑)。これも小物ゆえなんでしょうか。
キャラとしてはまずは主人公《子爵》に一本。そして《木島閑音》に一本。この人の書くヒネたヒロインは好きだわ。
《子爵》の子供達が地味だったけれど、あくまで《子爵》が主人公ならそれも解りますね(笑)。
評価としては微妙な所。成田作品のファンならモンクなく面白いとは思いますがそれでも今一歩だった感があります。これは次作に期待かな。

アリソン 3 下

2004年5月12日 読書
ISBN:4840226814 文庫 時雨沢 恵一 メディアワークス 2004/05 ¥536
巨大な大陸が一つだけある世界。その大陸は、中央にある山脈と大河で、二つの連邦に分けられている。その東側の連邦に暮らす、学生ヴィルと軍人アリソンは、二人とも17歳。長く続いていた戦争は表面上終わり、二つの連邦をつなぐ大陸横断鉄道が開通する事になった。友人で西側軍人ベネディクトにチケットを貰い、豪華大陸横断列車に乗り込んだヴィルとアリソン。乗客は名のある人達ばかりで、ストーク少佐という軍人とも知り合いとなる。しかし、次々と列車の乗務員が殺されてしまう事件が起きて、楽しいはずの旅行が一変してしまう。犯人がわからないまま、引き返す事になり、さらに二人は事件に巻き込まれる事に……!
http://www.mediaworks.co.jp/users_s/d_hp/
アリソン完結です。感想ネタバレ含みます。下巻と言うコトで全編が解決編的な構成になっており、分冊したのが残念です。やっぱり通して読まないとですね。
オチとしては結構予想されていたオチで驚きはありませんでしたが綺麗に終らせたと言う感じです。でもラストはちょっとなぁ。結局ヴィルは自分の仕事を優先させちゃったって事で、アリソンとリリアが少し可愛そうな気も。まあ両方とも性格から言ってさっぱり割り切れるんでしょうけど、それでもね。最後まで朴念仁だったとこと言いヴィル君、ちょっと情が無いんじゃない?
あとがきでもありましたが娘編があるかもしれないとの事でかなり期待してはいます。
ISBN:404427603X 文庫 都築 由浩 角川書店 2004/04/28 ¥620
とある惑星の大学で異星生物学を教えるカイル・アンダーソン。普段はさえない助教授の裏の顔は、その世界では超有名な切れ者冒険者。美少女学生リディアとの危険な冒険が始まる!!
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_search.php?pcd=200401000482
表紙絵からも想像がつきますがSF版インディジョーンズで間違いありません。で、どうしてもインディジョーンズと比べてしまう所もあって、正直主人公含めてキャラが弱いのかイマイチ盛り上がりにかけます。話としてはまとまっていると思うのですが終盤の敵役も背景の書き込みが足りないのか動機がどうも平板に見えて感情移入出来ません。かと言って駄作か、と言うとそう言うわけでもなく、普通に読ませる技量はあるのではないかと。
毒にも薬にもならない、まあお手軽な一作と言う感じでしょうか。
ISBN:4840110700 文庫 高殿 円 メディアファクトリー 2004/04 ¥609

かつて人間はその愚かさゆえに神の怒りにふれ、魔法の力を奪われた。しかし人々は、魔法を弾丸の形に封じ込め、銃器で使うことを思いついた。かくして再び戦乱の時代が訪れた。そのさなか、14歳の主人公・セドリックは、二人の少女と共に「あるもの」を探す旅に出る。果たして、その「あるもの」とは一体何か? 本格ファンタジーシリーズ、今ここに開幕!
http://www.mediafactory.co.jp/cgi-bin/bunkoj_detail.cgi?id=1576
バッカーノの挿絵でお馴染みエナミカツミの表紙が目をひくこの『銃姫』。マイナーレーベルながら時々ヒットを飛ばす集英社スーパーダッシュ文庫とMF文庫Jのうち後者からのリリースです。
二人の少女の個性が強くて主人公が影が薄い所は、作品の雰囲気とあいまって冴木忍を思わせます。魔法銃のギミックはさして珍しいモノではなく、それがストーリーに影響を与えているかと言うとこれまたさほどでもなく。世界のバランスを崩す力を追う点や、主人公達がやりきれないような世界の暗部を見ながら進んでいく様も前述、冴木忍の卵王子カイルロッドシリーズを思い出させて、この作品が好きだった自分のツボをついてくれます。
一応一巻のラストはハッピーエンド?で結んであるので安心。
一巻目から頻出の伏線を含めて主人公達がどう成長しながら旅を続けていくのか、続刊が楽しみな所です。
ISBN:4125008027 新書 佐藤 大輔 中央公論新社 2004/03 ¥945
凍てつく冬の朝、駒城下屋敷に銃声が轟き、未だ凱旋式典の残滓を纏う皇都に軍靴の響きが。遂に守原が起ったのだ。玉体を手中にした蹶起軍は市街をも制圧。この“義挙”に近衛中佐新城直衛の決断は!?
今日はヒマなのでガンガン書きます。
アクセス元表示でサーチされてたにも関わらず読了報告忘れてたのでしっかり書いておきましょう。なんと前巻から2年半。待ちきれずに血の涙を流すファンを鉄靴で踏みにじりつつ漸く登場した皇国の守護者8巻です(笑)。
正直7巻からちーとも話が進まないわけですが・・・。
しかし、漸くクーデターも勃発。帆船の拿捕シーンや、帝国側の萌え(?)宰相などさすがは佐藤大輔、もう一生付いていきますと言う感じの佐藤節の冴えまくりに信者も感涙の嵐であります。
時制が混乱しててワケわかんねーとか2年半待たせたのに「左舷、ページ数薄いよ、なにやってんの!」とかもうどうでも良いわけですよ。あと気に食わないイラストの平野耕太起用とかな。
まあ出たってだけで幸せな信者としては次は何時だ何時なんだと言うほうが重要でして。とにかく早く次を!猛烈な速さで!

結界師のフーガ

2004年4月25日 読書
ISBN:4840226598 文庫 水瀬 葉月 メディアワークス 2004/04 ¥620

妖怪がらみの怪事件、解決します!!
異界に名を轟かす「逃がし屋」を営む逆貫絵馬と助手の倫太郎のもとに、奇妙な仕事依頼の手紙が届いた。差出人は不明。しかも、現場は結界に守られた隠れ里で……。
読了後暫く放置してましたがつまらなかった訳ではなく忘れてました。(それもどうか)
妖怪退治の小説ってのはジャンルとしてはかなりあるとは思うんですが、逃がし屋と言う家業と、結界師と言うその戦い方が中々格好良い。逆貫絵馬が勘違いハードボイルド入ったトラブルメーカー的性格なのもうざくならないように上手く書いていると思います。
強烈なインパクトはないけれど良くありそうな設定を組み合わせて上手く料理しているな、と言う感じで好感が持てました。面白かったです。クトゥルフの呼び声(TRPG)のシナリオに使いたいくらい。
この調子で書いてくれれば続刊も期待出来ると思います。
ISBN:482916252X 文庫 田代 裕彦 富士見書房 2004/04 ¥567

以下公式HPより粗筋引用。
那須の一等地にあるホテルで休暇、という避暑のお誘いに一も二もなく飛びついた骸惚先生(と河上くん)だが、華族・日下家の遺産問題に絡んだ事件に巻き込まれることに――。折からの嵐により密室と化した洋館で、次々に謎の死を遂げていく日下家の跡取りたち。絡まる華族たちの思惑は、更なる事件を呼び起こす……。大正十二年を舞台に、探偵作家・平井骸惚の活躍(おまけで弟子の河上くん)を描く、本格ミステリの第二弾!
1月に第3回富士見ヤングミステリー大賞大賞受賞作として発刊された『平井骸惚此中ニ有リ』の続編。(1/27日記コメント有)
富士見ミステリ文庫の中でも本気でミステリしている稀有な一作として記憶に残っています。
今回は典型的な嵐の洋館パターン。相変わらずトリックが少々甘いような気はしますが、主人公河上君とヒロイン涼嬢を中心とした平井家の面々の掛け合いは微笑ましくライトミステリとしては十分に楽しめる出来。今回は骸惚先生のウンチクも大分少なめで、かなり読みやすくなったような気がします。(私としては物足りなかった気もしますが。)
何はともあれ十分及第点を与えられる作品でこのまま行けば富士見ミステリの看板シリーズの一角を担う長期シリーズになりそうで期待しています。
ISBN:4840226393 文庫 上遠野 浩平 メディアワークス 2004/04 ¥641
以下公式HPより粗筋引用。
どんなに絶体絶命でも、どんなに絶望的でも──抜け道はある。
 17歳の若き皇帝ローティフェルドは、義務と伝統に縛られ、自分のやりたいことすら見つからない日々に辟易としていた。そんな彼が憧れるのは、かつて全世界を相手に戦ったという美しき性別不明の戦鬼"ルルド・バイパー"。だがその子供っぽい憧れが、やがてこの世のすべてを揺るがす混乱に発展しようとは……。
 絢爛たる魔人と、容赦なき機械と、揺れ動く少年少女の心が毒蛇の如く絡み合う、これは無為無策(でたらめ)な夢物語の顛末――。
今回の新作は舞台はファンタジー風オリジナル世界なのですが、話としては久しぶりにブギーポップを思わせるような感じがします。なにか懐かしい感覚で読み進めました。
これまで確固としてあった世界は瞬時のうちに崩れ去り、それはただ二人の少年と少女の漠然とした不安から生まれた意思によって為される。この『世界の脆さ』と『人の強さ』の対比。
・・・なんて小難しい事を考えずともあっさり読めるジェットコースターファンタジーです。
取合えず上遠野ファンなら安心して押さえられる出来ではないでしょうか。

デュラララ!!

2004年4月11日 読書
ISBN:4840226466 文庫 成田 良悟 角川(メディアワークス) 2004/04 ¥662

今期ますます絶好調、成田良悟の新作です。
まあ某所でも『なにを書いてもネタバレになる』と言う言葉が出たくらい設定からしてぶっとんでいるわけです。舞台は普通に池袋なんですけどね。
これはもう是非読んでみてくださいとしか言いようがない。
成田良悟独特の、と言うか昔PBMとかメールゲームとかに手を出していた人なら解るであろうストーリーのマルチ進行。何処と何処がどう繋がっているのか焦らしに焦らしてどーんと纏めるこの快感。やっぱりスゲエ。ノってるね、成田。
そんな感じで気になる方は今回の絵師ヤスダスズヒト氏のHPの特集へGO。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/suzuhito/index2.html

来月は『ヴぁんぷ!』が発売。今まで使い古されてきた吸血鬼ネタをどう料理するのか、凄い楽しみになってきました。

来月の電撃・・・ヴぁんぷ!の他に、アリソン3下、9S3、空ノ鐘の響く惑星で3と三巻目攻勢。これは読むのが大変だっと。来月の電撃文庫の発刊予定はこちら。
http://www.mediaworks.co.jp/users_s/d_hp/new/next.html#8

贋作遊戯

2004年4月3日 読書
ISBN:4334075568 新書 赤城 毅 光文社 2004/03/23 ¥860

まいじゃー推進委員会http://maijar.org/でも注目されてて不思議とあのサイトとは趣味が合ってるみたいです。
このシリーズはコン・ゲーム小説と銘打たれています。コン・ゲームとは策略や詐欺の手管で騙し騙され、二転三転するストーリーの事を言います。
この小説の主人公は抜けた所はあるものの腕も良ければ、筋も通った一端の詐欺師。前作『紳士遊戯』では大陸帰りの主人公が伝説の詐欺師・四条君隆に弟子入りして師匠の敵を騙しのテクニックで果たすと言うストーリーでした。
今回は初めて登場するライバルの女性詐欺師と主人公立見広介の詐欺三本勝負がメイン。
非常にテンポが良くさくさく読める為、面白いのですがどことなく物足りなさを覚えてしまう部分もあります。詐欺のテクニックももう少し凝ってほしいかなとも思いましたが、最後でしっかりとオチもあって綺麗に纏まった楽しい一冊でした。
いけすかない奴等に一杯食わせる痛快さを是非楽しんで貰えればと思います。

だめだこりゃ

2004年3月21日 読書
ISBN:4101092214 文庫 いかりや 長介 新潮社 ¥438

いかりや長介氏、死去。持ち直したとばっかり思っていたので突然の訃報には驚かれた方も多いはず。反響もかなりあり、やはりドリフ世代の幅の広さを痛感。ご冥福をお祈りします。

で、確かこの本、読んでレビューしたっけなと思って過去ログを探ったらしてなかった。あれ?結構面白くて家族に貸したりもしたんだけれど。
で、この本、ドリフの結成秘話からその後の考え方、人生感までを書き込んだ中々読み応えのある本です。強烈な個性、我の強さと言うのがギクシャクしつつもドリフを纏めるのに必要だったのか、と。それから考えると晩年はすっかり丸くなりましたよね。本当に。そのある種、悟った感じが好ましい歳のとり方に思えて好きでした。
俳優としての長さんは、踊る大捜査線も確かに印象にあるんですがやっぱりNHK大河ドラマの独眼竜正宗なんですよね。鬼庭左月斎。
いかにも頑固な老武将ぶりが妙に似合っていて、今でもその姿を思い出せます。もう一度見てみたいなぁ。この前、再放送やってたよな。レンタルDVDとか置いてないかな。
ISBN:482916249X 文庫 師走 トオル 富士見書房 ¥560

逆転裁判ばり(と言うか殆ど逆転裁判)の法廷逆転ミステリ第四巻。とうとうライバルの検事も登場して、ますます逆転裁判の色が濃くなっていますが、まあやったもん勝ちと言いましょうか。スタイルは良く似ていますが内容はしっかりとしているので、楽しんで読めるモノにはなっていると思います。
主人公の弁護士山鹿善行もけして正義の使途では無く、使える手は何でも使って依頼者の無罪を勝ち取ると言うアクドイところがあってそこがまあ魅力と言えない事もありません。
今回のメインテーマは悪徳商法。ライバルも登場して法廷審理も一筋縄では行かなくなった中、果たして最後にどう逆転するのかが以前以上に楽しみになりました。犯人については中盤である程度解ってしまうので、後はそれをどう焙り出すかをお手並み拝見。
相変わらずの反則ぎりぎりのテクニックで見事に依頼主の無罪を勝ち取る様はなかなか爽快です。
富士見ミステリ文庫と言うマイナーなレーベルでしっかり頑張っている作品だと思います。逆転裁判をプレイしている方ならすんなりと入っていけますし気軽に読むのに最適な一冊ではないでしょうか。

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鴉

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