円環少女 ○

2005年9月7日 読書
ISBN:4044267030 文庫 長谷 敏司 角川書店 2005/08/31 ¥580
"私は戦う― この《地獄》で。苛烈な罪を負った少女が織りなす灼熱のウィザーズバトル開幕!"
"幾戦もの魔法世界からと呼ばれ最も忌み嫌われた場所―地球。なぜなら、本来自然なはずの魔法現象を消滅させてしまう恐るべき力を、人類だけが持っているからだった。元の世界で犯した罪のための堕とされた一人の少女魔導師・鴉木メイゼル。彼女の受けた刑罰は、で敵対魔導師100人を倒すこと―。 の使い手が、誰もが成し得たことの無い過酷な運命に立ち向かう!灼熱のウィザーズバトル開幕!" http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_search.php?pcd=200505000099
2001年12月デビュー作『戦略拠点32098 楽園』で無名ながら読んだ読者を唸らせその期の2chライトノベル板大賞ではBLOODLINK2・イリヤの空〜2についで3位を獲得、1年後『フリーダの世界 天になき星々の群れ』で一発屋では終わらないことを証明した隠れた実力派(と勝手に呼んでいる)長谷敏司。
そして音沙汰が無くなって3年。漸く新刊が出ました。

設定は良くある現代社会の魔術師バトルモノでヒロインがツンデレロリ少女とライトノベルの王道を行き過ぎてしまっていて、うわー編集さんによっぽど売り上げの件でいぢめられたのかなぁなどと邪推してしまう位。ご本人も自分のHPで『今回は、従来の私の小説と比べると、ずっとライトノベルらしい楽しみ方がしやすい作品になっています。』http://www7.plala.or.jp/para_shift/とのたまっておられる(笑
で、読んでいくと中々一筋縄には行かない展開。設定や内容は面白いのだけれど致命的に読みづらいのはその設定にしろ描写にしろ色々足りない。で再読するとすんなり読めた。
再読しなければならないライトノベルもなんだかなぁという感じだがそれだけでは捨て置けない魅力があると思う。後半は荒いけど展開は熱いしね。
なんにしろ続けて書いてほしい作者さんだ。売れるとよいんだけどなぁ。
ISBN:4061824406 新書 高田 崇史 講談社 2005/08/05 ¥840
牛王宝印(ごおうほういん)に秘められた八咫烏(やたがらす)の正体と熊野三山の謎を解く!
和歌山・熊野を舞台に、旅する「QED」第10弾!
和歌山県・紀伊半島に位置する、古来からの信仰深い土地“熊野”。浄不浄を嫌わず、黄泉の国との謂れもある熊野三山――熊野本宮(ほんぐう)大社・熊野速玉(はやたま)大社・熊野那智大社――の神々には意外な逸話が隠されていた……。伝承にまつわる一寸の「?(クエスチョン)」から歴史を辿る桑原崇(くわばらたかし)と棚旗奈々(たなはたなな)の旅路は、故郷を捨てた悲しい運命(さだめ)を生きる神山禮子(みわやまれいこ)と共に、熊野が孕む深遠な謎へと迫っていく!!
シリーズ買いしているQEDの10作目ですが今回の内容は…。一応ミステリ風味のラストですが熊野薀蓄旅行記と言う感じです。熊野言ってみたいなぁ。それだけの作品ですね(笑

魔術師の娘 ◎

2005年8月22日 読書
ISBN:4150203954 文庫 宇佐川 晶子 早川書房 2005/08/09 ¥882
アルダー神の弟子となった孤児は、やがて魔術師ベルガラスとして神の指示のもと光の“予言”を実現すべく力を尽くすようになった。
邪神トラクから“珠”を奪還するという重大な使命にも成功し、ベルガラスの名は世界に知られるようになる。
だが、最愛の妻ポレドラの死に打ちひしがれた彼は放浪の旅に出た。
神の与える使命も生後まもない娘たちも捨てて…。
ベルガラスと娘たちの心のつながりが描かれる波乱万丈の第2巻。http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-ISBN=4150203954
魔術師ベルガラスの第二巻です。現在新装版で復刊された『ベルガリアード物語』とその続きである『マロリオン物語』の前日譚ですが二つの物語が終わった後にベルガラスが一人称で述懐する形式ですので、両物語を読了してからの方がお奨めです。
第1巻では魔術師ベルガラスの誕生から珠をトラクから取り戻すための冒険譚、そしてポレドラとの結婚、娘の誕生と妻との死別まででした。第2巻では妻との死別からの立ち直り、二人の娘の成長と和解。そして数千年の経緯の中で、マラゴーの悲劇、ワキューン一族の滅亡、リヴァ王一族の暗殺と以前は歴史として語られていた物語が多少はしょり気味ではありますが次々と語られていきます。
このあたりは続刊予定のポルガラ編で詳しく語られるのかもしれません。今回の見所はベルガラスとポルガラと言う世にも特異な魔術師父娘の心の交流です。妻との死別に失意のあまり幼少期に全く放っておかれた聡い娘を最初は手に余らすものの次第に深い愛情と共に見つめていくベルガラス。特に娘の恋愛にやきもきする父親・ベルガラスの姿はいかにもヒューモラスで彼らしい。時に見せるその父娘の深い愛情表現にじわりと感動しながら共に歴史を追っていけます。
いよいよベルガリアード物語の主人公、ガリオンの登場も近くなってきした。最大のイベントであるトラクの西方侵攻とボー・ミンブルの戦い。そしてガリオンの両親の悲劇。大戦記あり、愁嘆場ありでますます目の離せない最終巻になりそうです。
ISBN:4150308098 文庫 小川 一水 早川書房 2005/08/09 ¥756
ホット・ジュピター型巨大惑星に住む特異知性体がはるかな星に呼びかける――「老ヴォールの惑星」。
 わずかな水と食料しかない迷宮で織り成される、囚人たちの生死をかけた営み――「ギャルナフカの迷宮」。
 百五十光年離れた星を訪れた探検隊が体験する、奇妙に順調なコンタクトと、秘められた罠――「幸せになる箱庭」。
 八億平方キロの海を持つ惑星で、ただ一人生き抜いた男の生涯――書下ろし作品「漂った男」。
 四本を収録した作品集。
http://homepage1.nifty.com/issui/sakuhin1.htm#voool
久しぶりにじっくりSFを楽しんだなーと余韻たっぷりな小川一水初?短編集。
著者お得意?の囚人たちの閉鎖空間での社会構築ドラマ『ギャルナフカの迷宮』、異星人とのファーストコンタクトを扱いながら同時に箱庭空間の意義を鋭く問う『幸せになる箱庭』も秀逸だが全く新たな知性体を描きながらラストで余韻と感動を残す『老ヴォールの惑星』と理不尽な状況の中で一人生き続ける事を強いられた一人の男の生への一歩『漂った男』が悲劇では終わらない生への力強い一歩、未来への希望を残す小川一水らしい終わり方で素晴らしかった。長編も良いのだがこんな密度の高い良質な短編集を今後も書いていって欲しい物だ。ライトノベルメインの方には少し重いかもしれないが短編なだけに読みやすいしキレも良い。SF入門書としても良いのではないだろうか。
知名度もだいぶ上がり絶好調で作品を上梓し続ける作者の次回作を楽しみに待ちたい。

blogmap『老ヴォールの惑星』
http://1470.net/bm/asininfo/4150308098

犬はどこだ ◎

2005年8月17日 読書
ISBN:4488017185 単行本(ソフトカバー) 米澤 穂信 東京創元社 2005/07/21 ¥1,680
何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所〈紺屋S&R〉が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。――それなのに開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして――いったいこの事件の全体像は? 犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵・紺屋長一郎、最初の事件。『さよなら妖精』で喝采を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説!
http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3387
ライトノベルレーベルでデビューし、今やミステリ作家として確実な地歩を築きつつある米澤穂信氏の新作は学生を主人公にしていたこれまでの作品とは異なり25歳の探偵。開業の理由と舞い込む二つの事件、学生時代の後輩半ペーを加えて捜査が進むうちに見えてくる二つの事件の関連性。そして最後にはなんとも苦い結末が。田舎町のゆったりとした雰囲気を背景に、中盤までは謎を散りばめながらぐいぐいと読み進ませていき、終盤に一気呵成に結論を叩き出し、苦い余韻を残す。
ビターテイストな傑作ミステリに仕上がっています。
ラストの後味の悪さは同じ日常の謎派出身の若竹七海さんに通じるものを感じさせます。
読み終えてふと思ったのは主人公の年齢。読んでいる間はすっかり30代くらいのイメージでしたが改めてみると25歳なですね。
とにもかくにも読み応えのあるお奨めのミステリーです。

blogmap『犬はどこだ』
http://1470.net/bm/asininfo/4488017185
『とある作家秘書の日常』さんより
http://a-hiro.cocolog-nifty.com/diary/2005/08/post_67ce.html
アルスラーン戦記の新刊がついに脱稿したそうです。

第10巻は1999年12月1日に発刊されましたから5年8ヶ月。正式に発刊されるのはいつの日やら。
とにかく待つしかないですね。

それにしても地震が長く続いて驚いた。
 16日午前11時46分ごろ、東北地方で強い地震があり、宮城県川崎町で震度6弱を記録した。北海道から近畿にかけて震度5強から1を観測した。気象庁によると、震源地は宮城県沖で、震源の深さは約20キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.8と推定される。東北地方で震度6弱以上の地震を観測したのは、03年7月26日の宮城県北部の地震(M6.4)で震度6強を観測して以来という。(毎日新聞)

ISBN:482916316X 文庫 田代 裕彦 富士見書房 2005/08/10 ¥651
二つの事件、二つの死体。この謎、どうなる河上くん!?
[ 内容 ]
親友に招かれ、大晦日のパーティに出席した河上くんと涼嬢は、会場で不可解な殺人事件に遭遇する。一方、親戚宅に出向いた骸惚先生を待ち受けていたのは死体。共通するのは首無し死体――!? 人気シリーズ完結編!
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_search.php?pcd=200506000188
内容もしっかりとしたミステリで、前回は押さえ気味だった涼さんも今回は絶好調。河上君との仲の進展が気になるところ…で相変わらず大変好みのこのシリーズなんですが…なんでシリーズおわっちゃうのよ、これで!
売り上げの問題での打ち切りなのか、はたまた後書きにも在る如くこの形態で続編を書き続けるのが難しくなったからなのか。シリーズ完結としては中途半端すぎの感がありありで、とにかく残念でなりません。続編を書く気も無いみたいだしなぁ。
もう少しこのシリーズが読みたかった。
次回作が『キリサキ』の続きになるのか新シリーズになるのかはまだ解りませんが正直『キリサキ』は微妙だったので頑張ってほしい所です。
ISBN:4125009090 新書 内田 響子 中央公論新社 2005/07/26 ¥945
結婚式の最中に消えた夫を取り戻すため、わたしは幼馴染の見習い僧を連れて城を飛び出した――封印された手稿が語る「名も無き姫」の冒険譚! 第一回C★NOVELS大賞特別賞受賞作。
http://www.chuko.co.jp/new/2005/07/500909.html
主人公が負けん気が強く理性的なお姫様と言う点を除いてはごく正当なファンタジー小説。
華々しい見せ場や個性的なキャラクターは居ませんが良く纏まっていて名前も語られぬお姫様の物語にいつのまにか引き込まれていきます。何故彼女の夫は消えたのか。この謎は最後までひっぱられますがそのオチと共に訪れるラストも淡々としていて良い。
そして最後のエピローグでじーんとくる余韻を味わいました。
この本の真価はこのエピローグなのではないかな。ここで初めてタイトルの意味が(最初から予想はつくにしろ)しっかりと解ることになります。
読後にしみじみ読んでよかったなと思う一冊。
12月のベロニカと言い、ちょっと古い感じのするこういう正統派ファンタジーが実は大好きなんですね、自分。
ISBN:4044708037 文庫 水口 敬文 角川書店 2005/07/30 ¥560
未来から流刑としてやってきた朝槻憐は普通の少女として生きることへのあこがれと、未来から捨てられた“不要”な自分という狭間で悩み続ける。そんな憐の前にある事件が訪れる。憐たちの日常を綴る短編集登場!
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_search.php?pcd=200505000090
憐のシリーズ第三作目は中編集。どの作品も相変わらず憐が可愛いのです。これぞツンデレですか。
特に憐に恋のライバル出現?の『〜link〜』とかプールだ水着だカナヅチだ!の『〜strategy〜』とか本当に読者のツボをご存知ですね(笑)。砕けた話だけでは無くて進路と言う未来に悩む憐を描く『〜conclusion〜』、そして次作への伏線を残した『EPILOGUE』で締めて構成もお見事。さらにはイラストも仁美のキャラデザイン以外は素晴らしい。特にP189とかP235のイラストの憐が・・・。(逆に仁美はああじゃないような気がする。)
そんなわけでちょいと贔屓の◎をつけときますね。
ISBN:4840112908 文庫 ヤマグチ ノボル メディアファクトリー 2005/07/22 ¥609
才人はある日突然異世界ハルケギニアに『召還』されてしまった高校生。元の世界に戻る方法を探しつつ、美少女魔法使い(メイジ)・ルイズのもとで使い魔として暮らしている。顔は可愛くても高飛車で意地っ張りなルイズとは、いつからかお互いを意識するようになったものの、すれ違ってばかり。そんな状態で迎えた夏休み、アンリエッタ女王に町の偵察を頼まれた才人とルイズは、下町の酒場で住み込みのアルバイトを始める。ルイズはプライドの高さから客を怒らせてばかりだが、店では客からもらうチップを競う「チップレース」が行われることに……(第一話)。今回は夏休みを舞台にした短編集。大人気のキュルケ&タバサの出会い編も収録!
http://www.mediafactory.co.jp/cgi-bin/bunkoj_detail.cgi?id=5985
なんか今回読んだのは短編集ばっかりですね・・・という訳でゼロの使い魔もシリアスな本編からインターミッションと言う事で初めてのお使いに出発するルイズと才人な訳ですが・・・ルイズ無能すぎ(笑)
国の為に孤独な鉄の女王にならなければならない、そんなアンリエッタ女王の一日の脱出劇を描く『トリスタニアの休日』が今回の白眉か。
しかし、やはり本編のあの緊迫感がないとどーということのないツンデレ作品になってしまう事をこの巻で確認したゼロの使い魔。
さっさと本編に戻って欲しいですね。(を
ISBN:4086302470 文庫 山本 ヤマト 集英社 2005/07/22 ¥650
ターゲットにされたジュウ、犯人の目的は!?
些細な嫌がらせも、積み重なると苦痛になる。人に恨まれる心当たりのあるジュウはあまり気にせずやり過ごしていたが、ついに限界に達し、雨をつれて犯人探しを始める。人の弱さが歪んだ強さに変わる恐怖、犯人の行動理念に驚かされる!電波系サスペンス第3弾!!
http://dash.shueisha.co.jp/whatnew/-denpa/index.html
タイトルとは違い、しっかり読み込める学園ミステリー/サスペンス小説シリーズ第三巻。前作よりも確かにサスペンス風味が勝っている今作。いきなり痴漢の容疑をかけられ退学に追い込まれそうになるジュウ、その余波で恋する相手の前で辱めを受けた雨の妹、光。自らの事よりも光の為にジュウは動き出す。
本筋は相変わらずダークな事件。そして途中でちりばめられる雨や雪姫とのエピソード。先ほどレビューを書いたレンタルマギカと大骨の構成は似てるのだが何故出来がこれ程違うのだろう。やはり主人公の心情の描き方、行動の動機を如何に読者に納得させ感情移入させるかなのかなと思います。中心がしっかりしているからこそ脇も光るわけですよ。
とにかく最後にはちょっとしたどんでんがえしもあり、学園サスペンス物として読み応え十分。期待を裏切らない出来の三冊目。
文句なくお奨めです。
ISBN:4044249083 文庫 三田 誠 角川書店 2005/07/30 ¥540
魔法使い派遣会社〈アストラル〉2代目社長の伊庭いつき。入院先で同室となった少女・黒羽まなみが呪波汚染に襲われるが彼女にはある秘密が……!?
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_search.php?pcd=200411000149
レンタルマギカも三冊目にして短編集。時系列的には1巻と2巻の間の話。所謂一巻が出た後でザ・スニーカーで連載したものですね。
三冊買ってきたにも関わらずこのシリーズ苦手です。
第一に主人公がつまらない。普段の性格もそうですが、妖精眼を発動させてもイマイチ魅力が上がらない。なんとなくうだつが上がらないキャラなんですよね。それにヒロインであるはずの穂波が不遇すぎる。作者は穂波というキャラが嫌いなんじゃないかとまで思う不遇っぷり。で脇のキャラに注力を注いでるってメインキャラ立たせないで脇に行かれてもなぁと思うわけです。みかんとかアディとか描く時は気合入ってるんだよな(笑)
そんな訳で後一冊くらいで見切りつけるかもしれません。
ISBN:4150308039 文庫 新城 カズマ 早川書房 2005/07/21 ¥693
無数の時間SFを分析し、県道での跳躍実験をくりかえすなかで、自らの能力を自覚していく悠有。いっぽう、辺里の町では不穏な出来事が進行していた──続発する放火事件と謎の脅迫状。やがてぼくらは、悠有が一度も過去へ跳ばないことに気づいてゆく。そして花火大会の夜、悠有が姿を消した──。全二巻完結。
http://www.hayakawa-online.co.jp/

さて、これはどう評価すべきなのだろう。
ほぼ最後に語られる未来と、その未来へ一足先に跳んでいき、そのまま跳び続けていくのであろう少女。
この二冊の殆どを締めるローカル系の様々な事件は如何にして少女は跳んだか、その周囲を埋める為のテキストなのだろうか。
何にしろ偽装誘拐、放火犯の正体、そして語られるその後と独り飛び続けているであろう悠有。
仲間達は大人になり、青春時代の未来への漠然とした不安と絶望はそのうち自らの現実、そして過去へと流れ去っていく。
そして今も、かつての少年は今も少女の行く先へと思いをはせる。
物悲しく切なく余韻を残す終わり方だ。
大人にならねばならない少年少女達のひと夏を切なく描く青春小説として読むのか、最後だけを評してSF小説として読むのか、そんな事はどうでも良いがなんとも総体的な評価?に困る作品ではある。
久々に他の人の書評を読んでみたい小説だ。
貴方はこの本を読んで何を思いましたか?

BlogMAPのサマー/タイム/トラベラー2のページ。
http://1470.net/bm/asininfo/4150308039
疾走!千マイル急行 上 ○
朝日ソノラマ文庫 著/小川一水 イラスト/長澤 真 A6判
580円
贅を尽くした内装、磨き抜かれた漆黒簿のボディ。東に向かう国際寝台列車「千マイル急行」に乗り合わせた若者たちの心は躍る。だがしかし、その目的地は明らかではなく、豪華列車にはおよそ不似合いな車両が連結されていた・・・。
http://www.asahisonorama.co.jp/hp/whatsnew/7gatushinkanjyouhou.htm
dairynoteのAmazonへのリンクが文字化けする現象がおきているので自前で書き込み。
著者曰くジュヴナイル鉄道冒険小説。故郷の都市エイヴァリーが侵略に晒される中、目的を知らされぬまま乗り込んだ少年少女達は遥か東の都市国家に援軍を求めるために装甲列車に守られた豪華特急『千マイル急行』で、敵の追跡を避けながらひたすらに旅を続ける事になる。
立ち寄る都市国家はさまざまで、追っ手を避けながら次の路線と行く先を決め進んでいく特急列車と言う独特のギミックと共に話を盛り上げてくれます。相変わらずと言うかギミックに比べて主人公である少年少女達のキャラが弱い気もしますが瑕疵となる程でもなく。子供たちとエイヴァリーの運命は如何にとはらはらしながら下巻を待たせてくれます。いつ出るのか楽しみですね。
ISBN:4829117400 文庫 賀東 招二 富士見書房 2005/07/20 ¥546
陣代高校最大のイベント、学園祭が開催された!もちろん、やっぱり盛り上がるのはミスコンテスト。陣高で「恋人にしたくないアイドル」の異名をとるかなめも、一部の好事家により推薦されるが……。絶好調短編集!
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_search.php?pcd=200503000353
いよいよシリーズ終焉か、シリアス度の増してきた本編とは違い、相変わらず短編集はすっとばしてますが奥付を見ると二年以上前の作品群なんですね、これ・・・。
FFを意識したMMORPGネタの『約束のバーチャル』
これを二年前に書いてるというのに結構驚きを感じました。最近のネトゲネタの作品の多出に乗って来たのかなと思いきやとんでもない。とっくに商業誌でやっている所にさすが作者のオタク度の高さを再確認。ベタだけど面白かったです。
後の三篇はネタとしてはイマイチでしたが最後のかなめと宗介のこのやりとりで締める所、お見事でした。殺し文句ですよねホント(笑

星界の断章  1

2005年7月20日 読書
ISBN:4150308020 文庫 森岡 浩之 早川書房 2005/07/08 ¥609
アーヴの起源を語る「創世」をはじめ、平面宇宙航法開発に絡むエピソード「蒐集」、スポール幼少時の伝説「君臨」、ソバーシュの地上世界探索行「夜想」、ラフィール生誕にまつわる秘話「誕生」、ジントの人生を大きく変える原因となった「接触」ほか、サムソンの食へのこだわりや、ジントの修技館時代の思い出など、本篇ではくわしく語られることのなかった星の眷族たちの逸話を収録。
書き下ろし「原罪」をふくむ全12篇。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-ISBN=4150308020

紀伊国屋書店のwebはしっかり作品紹介が書かれていて毎度助かるな…と感心しつつこの星界の断章であります。
これまでのアーヴの誕生から帝国の成立以前のエピソードを綴った短編を集めた短編集です。
『創世』そして今回書き下ろしの『原罪』、この二作が今のアーヴの存在を象徴しているようで興味深い前日譚となっています。
そしてフォントの違う短編については…一応パラレルワールドの出来事として心の隅においておくことにしましょう…。
とりあえず本編の続きもよろしくお願いします…。
ISBN:415020392X 文庫 宇佐川 晶子 早川書房 2005/07 ¥882
光と闇、ふたつの“予言”が織りなした運命のゲーム―“ベルガリアード物語”で語られた壮大な叙事詩の陰には、歴史をみつめ、動かしてきた魔術師ベルガラスの姿があった。
そして戦いを終えた今、愛すべき老魔術師は、七千年におよぶみずからの人生を振り返る。
その生い立ちから神の弟子となるまで、かけがえのない者たちとの出会いと別れなど、数々の秘密が明かされる待望の“ベルガリアード物語”前史、ついに開幕。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9979701153
ついにキタコレ。物語の前史にあたる魔術師ベルガラスの物語。待ちに待ったエディングス氏の新刊がハリポタ人気にあやかってついに出版です!
今回の話はマロリオン物語のエピローグの後、ガリオンやダーニクにせがまれたベルガラスが(嫌々ながら)自分の過去を語ると言う形式になっていて完全なベルガラス一人称で書かれています。
つまりベルガリアード・マロリオン物語を読んでいないと意味不明の箇所があり、単独で読むのはどうかと思われます。そもそも原作はマロリオン物語が出てから期間をおかずに出ておりしっかり続き物なのですが、日本では結局マロリオン完結かせ10年以上の時間がたっており新装版も漸くベルガリアードが完結した所と、ちぐはぐ感はありますね。
ですが待っていたファンにとっては所々で出てくるベルガラスの呼びかけやベル・マロにかかわるエピソードへの言及など非常に楽しめる一作になっています。
これまで語られなかったベルガラスの失われた兄弟弟子達の物語や、それぞれの神がまだ地上に居た時のエピソード、そしてチェレクと三人の息子たちのキャラクター。
預言書でしか知られなかった過去が赤裸々に語られるというこの楽しみが今作の醍醐味ですね。
続刊、そしてポルガラの物語、今からとても楽しみです。
ISBN:4840230846 文庫 渡瀬 草一郎 メディアワークス 2005/07 ¥620
謎の強敵と戦うフェリオたち。 はたして勝機はあるのか!?
御柱から現れた謎の兵 “死を恐れず、際限なく現れる敵” を相手に苦戦を強いられるフェリオたち。
さらに、神殿騎士団・団長ベリエが突如暴走し、自分の部下にまで剣を向けるという事件が起こる。
そんな中、御柱の異変を知ったコウ司教が、事態を収拾するために下した重大な決断とは――!?
異世界SFファンタジー第7弾!
http://shop.mediaworks.co.jp/ds_item.php?cd=A0511490
相変わらず中々ストーリーは進みませんが今回でフォルナム神殿編は一段落。熱い戦いが繰り広げられます。
そして一難去ってまた一難、苦難の道を進むウルクとリセリナの明日はどっちだ。ビジター達もそれぞれの道に別れ、新たなストーリー展開を感じさせてくれる七巻。
大河ファンタジーシリーズは中々終わりが見えそうにありません。
ISBN:4840112746 文庫 月見 草平 メディアファクトリー 2005/06 ¥609
あらゆる鍵を開けてしまう特殊職業、魔法鍵師。15歳の少女・カルナはおじいちゃんの跡を継ぐべく修行中の見習いだ。師匠のミラは大陸一と名高い凄腕の鍵師。絶世の美女だが口も性格も悪いミラのもと、毎日毎日修行してきたカルナは、今日がようやく初仕事! 頑張るぞっ!と気合いを入れてのぞんだ仕事の内容は、遺産の入った魔法の金庫を開けることだった。それも、鍵師たちに畏れられる最強の――ランキンズワークと呼ばれるもの。歴史上最も有名な鍵師・ランキンのつくったその鍵に挑むカルナだったが、それは同時に、長い物語の鍵を開けることでもあった……。鍵の後ろに隠された秘密と謎を解き明かす、新感覚の鍵開けファンタジー開幕!
http://www.mediafactory.co.jp/cgi-bin/bunkoj_detail.cgi?id=3671
魔法鍵師と言う一風変わった、しかしファンタジー好きの心をくすぐる設定を持って来た期待の一作。
鍵の仕掛けが随分とあっけなかったり展開が速くて仕事を始めたばっかりのカルナが天分はあるにしろほいほいと依頼をこなしてしまうなど少し詰め込み過ぎで慌しいきらいはあるものの素材を旨く料理しているなと思います。ストーリー展開もファンタジーというかRPGの王道で、昔リプレイやシナリオ集を読み漁った方は懐かしくさえなるような構成。悪く言ってしまうと捻り不足でありきたりとなってしまいますが自分的には安心して読めたという印象で意外と気に入っている作品です。
ちなみに今回の自分の投票分。日記からの切り出し多し。

●大賞・イチオシ賞
○《ディバイデッド・フロント III. この空と大地に誓う》 (著:高瀬彼方/絵:山田秀樹/スニーカー文庫)
弱い者、強い者、それぞれの持つ苦悩も合わせて、主要キャラクター達の心情を見事に描き分けて感情移入させてくれるその手腕に脱帽。
基本的に救いのない、そして過酷な世界の中で、未だ諦めずに踏みとどまって戦うその健気、強さが素直に感動を与えてくれる。
この三巻、この終わり方があってこのシリーズは名作となったとここに断言する。

《平井骸惚此中ニ有リ 其四》(著:田代裕彦/絵:睦月ムンク/富士見ミステリー文庫)
大震災の避難先と言う閉じた空間の中、涼のツンデレと撥子ちゃんのデレデレがスパーク!
本筋のミステリもきっちりと作り込み、河上太一大活躍。しかも最後に今回は完全脇役の骸惚がきっちり締めるこの構成。
シリーズ第四作にして最高傑作となったこの作品がライトノベルとミステリの融合、富士見ミステリ文庫の存在価値の真骨頂を見せてくれた。

《半分の月がのぼる空 4 grabbing at the half-moon》 (著:橋本紡/絵:山本ケイジ/電撃文庫)
荒野の恋と最後まで迷ったがGOSICKも入れているのでこちらを取った。
この作者の良い所はこういうベタなネタとベタな展開でもしっかりとキャラへの感情移入を成り立たせきちんと泣かせてくれる所にある。
もうベタとかどうでも良い。むしろベタだから良い。
小夜子さん・・・ええ人や・・・。こんなええ人死なせたらあかん、あかんやん。と思わず関西弁で語り出してしまうそんな作品。

《GOSICK IV ―ゴシック・愚者を代弁せよ―》 (著:桜庭一樹/絵:武田日向/富士見ミステリー文庫)
おとぎ話と現実が錯綜してくらくらとする幻惑感を味わう中に、各キャラを立てるくすりとするエピソードが盛られており、
心地良くテンポ良く話を読み進めて行ける所が素晴らしい。ミステリとゴシックとボーイ・ミーツ・ガールの要素がバランス
良く盛り込まれた良作。武田日向のイラストも素晴らしい。

《わたしたちの田村くん》 (著:竹宮ゆゆこ 絵:ヤス/電撃文庫)
ストーリーはごく定番。でも主人公やヒロインの台詞回しやストーリーのノリ、その他、とにかく良く料理された今期最高のラブコメディ。
次巻への期待、新人としての評価含めてイチオシにもしたい完成度の高い作品だった。

次点は
薔薇のマリアVer0 僕の蹉跌と再生の日々(著:十文字青/絵:BUNBUN/スニーカー文庫)
憐 Ren 2 錆びゆくココロと月色のナミダ(著:水口敬文/絵:シギサワカヤ/スニーカー文庫)
ソウル・アンダーテイカー(著:中村恵里加/絵:洒乃渉/電撃文庫)
荒野の恋 第一部 catch the tail(著:桜庭一樹/絵:ミギー/ファミ通文庫)
七姫物語 第三章 姫影交差(著:高野和/絵:尾谷おさむ/電撃文庫)

今期も良作が多く新人、定番シリーズ、シリーズ完結、新シリーズ等バラエティもあり大満足。

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鴉

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